ここまでのあらすじ
大手企業クラフト社からベンチャー企業モゾパス社へ転職した大和はチームとともに担当製品を成功させ順調なキャリアを送っていた。しかし主力製品が欠品問題を抱えたモゾパス社の株価は急降下し大和が以前勤めていたクラフト社に買収されてしまう。両社を知る大和は2つの企業の統合プロジェクトに抜擢されるがこのままクラフト社へ戻るべきかどうか悩みながら仕事にあたる。そのような中新たに新製品を発売する欧州に本社を置く業界中堅企業アーセン社から誘いを受けた大和は再度転職を決意しアーセン社の面接へ臨むのであった。
オファーレター

既に新製品事業部・事業部長・宇月の推薦を得ていた大和の面接は1度のみ、面接官は社長のクロースと人事担当の伊豆の2名と行われた。
もし大和が製品担当者になった場合、どういう販売戦略を立案するのかについてクロースと話しをし会話は盛り上がった。大和は合格しているだろうと確信した。
約2週間で正式なオファーレターが届いた。
年収は若干あがるものの役職は担当課長であった。まだ新製品が販売されていない新製品事業部では部下を持つことができないため、まずは担当課長からスタートしてほしい旨人事の伊豆から説明をされた。また社長のクロースからはさらなる英語力の改善を求められた。面接でコミュニケーションに困ることはなかったが複雑なビジネス課題を説明するには確かにさらに英語を学習する必要があった。
大和は帰国子女でもなければ海外で生活したこともなかった。それでも地道に学習を重ね外国人とビジネスのディスカッションができるまでに英語を上達させてきたのであった。
「英語は続けて学習しよう。」大和はアーセン入社後は毎朝早めに出勤しオフィスビルの中にあるカフェで毎日1時間英語を勉強した。今思えばこの頃が一番英語を勉強しただろう。
モゾパス社はクラフト社に買収されたとは言えまだグループ企業の1社という位置づけであり大和はモゾパス社へ辞表を提出することになった。
大和が出戻りを望んでいないことを周りもうすうすと認識しており辞表は簡単に受理された。
大和のアーセン社での闘いがはじまろうとしていた。
アーセン社・新製品事業部

アーセン社・新製品事業部にはすでに10名ほどの社員が働いていた。事業部長の宇月の下には営業部長がおり製品企画部長は宇月が兼任した。いずれ新製品が発売されその新製品を成功させた社員がこの製品企画部長に就くことになるだろうと誰もがそう考えていた。
入社して1か月もかからないうちに大和は事業部の異様な雰囲気を知ることになった。
宇月は派閥を形成していた。この新製品事業部のほとんどのメンバーが宇月が以前勤めていた「ガラム社」から連れてきたメンバーであった。宇月はいつもランチに一緒に行くことを半ば強制した。当然大和も最初は新製品事業部メンバーとランチに行ったが食事中の会話はいつも宇月の自慢話と、そして「成田」と「田中」の悪口であった。
「なんでこんなつまらない話を聞きながら食事をしないといけないのだろう。」
一度そう思ってしまうとランチが苦痛で仕方がなくなった。
仕事や体調を理由に大和は宇月とその取り巻きとのランチを回避するようになった。
宇月は疑心に満ちた男でこの大和の行動はその後思いもよらぬ結果をもたらすことになったのである。
失敗に終わった宇月降格

その後大和は自身が入社前に起こった事件を知ることになる。
宇月は入社後すぐに「田中」と「成田」を採用した。彼らはイルーゾ社からの転職でありイルーゾ社には今後この新製品事業部が発売する新製品の先行品を販売しており領域の知識や人脈を有していた。最初はうまくいっていた人間関係は数か月で崩壊した。それは宇月があまりにも自身は働かず海外出張にばかり出かけ、また成田が考えた販売戦略をまるで自分が考案したかのように取締役会で発表し、それに憤慨した成田が田中を事業部長にしようと社内で政治を働いた。
宇月の能力に疑問を持っていた取締役メンバーも少なからずいたため宇月は降格寸前まで追い込まれたが宇月がその企てに気づき田中と成田を新製品事業部から追放した。そして以前勤めていたガラム社の子飼いを連れて事業部を固めたのであった。
一方でガラム社からきたメンバーは田中や成田のような領域の専門性も持たなければ人脈も有していない。そこで領域で少し名の知れた大和に目をつけた宇月が山田を使い大和をアーセンに誘ったのである。
大和は宇月の子飼いメンバーになることを半ば強制された。その一つがランチであり、ランチに行かなくなると「大和は裏切るかもしれない。」「大和は成田や田中と飲みに行っている。」など根も葉もない噂が立ち始めた。
大和は自分に非がないことを確信していたし領域の専門性をもった自分を宇月を追放できないことも知っていた。
子飼いメンバーのふりをするには大和はまだ若すぎた。
宇月の子飼いたちは田中や成田を攻撃することで宇月の信頼を得ようと執拗な攻撃を続けた。
成田の女性関係を中傷するビラが会議室にまかれたこともあったし、コピー機で数百枚も中傷ビラをコピーしあえてそれを発見させて中傷ビラを周知させるようなこともあった。
「とんでもない会社に入社してしまった。」
しかしこの後大和は自身がラット・レースに巻き込まれていくことをこの時点では知る由がなかった。
<つづく>


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