「遠く離れた空の下」第2章 – 第12話【アーセンUS Inc.】

コネチカット ビジネス全般(海外での働き方含む)

ここまでのあらすじ

この物語はフィクションであり登場する人物・社名などはすべて架空です。

EUにおいて高い評価を得る中堅企業アーセン日本支社に転職した大和は社内の熾烈な派閥争いを知る事となる。派閥とは距離を取り自身の業務に専念する大和は新製品事業部の期待の新製品「キボウ」の担当者のポジションを勝ち取ることに成功する。製品企画担当者は部長である事が通例であり大和も自身が部長になることを信じていたが事業部長・宇月の策略により大和は部長になることができず、事業部長の宇月が製品企画部長も兼任することになる。激しい怒りを感じた大和はここで決定的に宇月との関係を悪化させる。一方大和を採用した社長クロースが本国に帰任することになる。クロースは帰任前に大和にUSへ行き「キボウ」発売のオペレーションを学んでくる事を指示する。大和はデルタ航空でJFKへ向かうのであった。

アーセンUS.inc

コネチカット

デルタ航空に乗り込むと大和はカバンからファイルを取り出して精読をはじめて。

USチームへ一時的に参加が決まるとUSチームが100枚以上あるレポートを送付してきてくれた。そこにはアメリカで「キボウ」発売までにどんな準備を行ったのか。どういう初期トラブルを想定していたのか。どういう対処を準備したか。実際に起きたトラブルはあったのか。顧客の反応。などである。

機内で最初の食事が提供され消灯までの約5時間、大和は集中してレポートに目をとおしパソコンにまとめUSチームへ行う質問を準備した。

ファイルとパソコンを閉じワインを頼み映画を半分見たところで眠気が来たので就寝した。

目が覚めるとデルタはシカゴ近くの上空にさしかかったところであった。

JFK国際空港に到着し到着ゲートを抜けるとUSチームが手配してくれたハイヤーの運転手が「Mr. FUMIYA YAMATO」のサインボードを持ち出迎えてくれた。

USの製造業の企業は本社を郊外においていることが殆どである。

アーセン社のUS本社はコネチカット州ダンバリーという街にあった。

JFKから北上する事約2時間30分、ハイヤーはダンベリー郊外のホテルに到着した。

この街ではアーセン社が最も多い従業員を抱える企業である事から宿泊客はアメリカ国内のアーセン社社員が多く、また大和のように海外のアーセン社社員も多く泊まるまるでアーセン社専用ホテルのようであった。

翌朝時差に苦しみながらホテルから出るリムジンバスでアーセンUSへむかった。

バスは山道を抜け突如現れた巨大なビル、そこがアーセンUSであった。

受付で名乗るとすぐにUS事業部長のケビンが迎えに来てくれた。

ケビンは大和を大きなオフィスへ連れていき

「ここが君がUSにいる間の君のオフィスだ。自由に使ってくれ。」

と言ってくれた。日本では社長室並みの大きさの部屋であり大和はアメリカのスケールの大きさに圧倒された。

その後ケビンの秘書が大和の仮オフィスを訪れ滞在中の予定を説明してくれた。

大体毎日午前中はUSチームとの1 on 1(個別面談)が組まれ午後はUSチームへの全体会議などに出席した。

1 on 1ではレポートの詳細について質問し日本で準備できている点とこれから準備しておいた方がいい点をディカッションした。

営業チームとも会議を行い顧客の反応やトラブルシューティングの実際を学ばせてもらった。

最初の数日は一日中英語で過ごす事につかれてしまったがそれにも慣れてきた。

地図

週末はニューヨークへ出かけた。

ダンベリーからニューヨークはメトロノース鉄道で2時間30分を要した。

シカゴ、サンフランシスコ、オーランド、ラスベガス、ニューオリンズ、ボストンへ訪れた事があった大和であったがニューヨークへ訪れたのはこの時が最初であった。

テレビや映画で見る景色を実際に見て大和はニューヨークを訪れてよかったと心から思った。

セントラルパーク横のカフェで白ワインを飲み帰路に就いた。

USでの仕事は充実していた。新しい発見や学びを得て大和の毎日は充実していた。

外国人であり、そして日本から来ていることもあり誰も大和をライバル視することはなく、皆親切に接してくれた。

「このままUSで働けるといいのに。」

大和は心からそう思った。

今思えば大和が海外で働いてみたいと強く考えるようになったきっかけはこのUS訪問だった。

大和はいつか海外で活躍する自分自身を思い描くようになった。

(実際に大和が海外駐在の機会を得たのはずっと後であったし、US赴任直前でコロナが蔓延し赴任先を変更する事になったのであった。この話もいずれ紹介できればと思う。)

帰国前日USチームが送別会を開催してくれた。ダンベリーの街のステーキハウスで日米それぞれの「キボウ」の成功と今後も続く協力関係を誓って乾杯をしたのであった。

(つづく)

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