「遠く離れた空の下」第2章 第39話【伏線】

網 ビジネス全般(海外での働き方含む)

ここまでのあらすじ

この物語はフィクションです。登場する人物や社名などはすべて架空の名称です。

新たに事業部長に就任した梨田は営業部に在籍する宇月派閥メンバーに執拗に攻撃を加えそのほとんどを降格に追いやり子飼いのメンバーにその管理職ポジションを与え営業組織での自身の権力を盤石に築いた。そして次のターゲットは本社・製品企画にあてられた。大和はなぜ敵対視されてしまったのか不信に思いながらも闘いが目前に迫ったことを自覚する。黒馬の提案したキボウサポートチーム設置はチームキボウを政治的に難しい立場にする事からその提案の却下を梨田に迫った大和であったが交渉は物別れに終わった。大和とチームキボウはいよいよ争いへと巻き込まれていくのであった。

キボウ営業サポートチーム

海外の地下鉄

黒馬の提案はチームキボウのサポートチームの設立であった。そしてその提案は受理され正式に「キボウ営業サポートチーム」が設立され黒馬はそのチームの管理職となった。

黒馬にとっては念願の部下とチームである。

「キボウ営業サポートチーム」は営業から優秀な人員を5名ほど引き抜いた。かつチームキボウの中で大和とは戦略における考え方が違うメンバーが一人おりそのメンバーが指名され黒馬を含め計7名でチームが発足した。

「キボウ営業サポートチーム」の業務は営業とともにインフルエンサーや準インフルエンサーと言える地方に点在する業界の権威者の管理を行う事であった。

ただしトップ・インフルエンサーに関しては「チームキボウ」と「キボウ営業サポートチーム」の役割分担は明確ではなかった。

チームキボウとしては、特に大和にとってはトップインフルエンサーの管理は重要視していなかったのだがキボウ営業サポートチームがその業務を取ってしまうと大和やチームキボウの影響力が低下する事からその仕事を再度優先順位を上げるしかなかった。

梨田の思惑として、まずはキボウ営業サポートチームにトップインフルエンサーも管理させ最終的に黒馬のチームを実質的にチームキボウに塗り替えようとしていることは明確であった。

そのため優秀な営業員を選抜し(トップインフルエンサーを担当していた営業員たち)さらに大和に対して従順でないチームキボウのメンバー・蒲田を黒馬につけた。

従順ではないとは言え蒲田は大和のやってきたことは一通り知っているしトップインフルエンサーを大和は彼に紹介もしていた。

大和はこの頃にはキボウの成功で社内での発言力は大きかったし新製品事業部を超えた各事業部でも評価され一目置かれる存在になっていた。また本国からの信頼もあつく業界でも高い評判を得ていた。

梨田は面白くなかったのかもしれない。

そして黒馬を使ってチームキボウを乗っ取りにかかってきたのであろう。少なくとも大和もチームもそう考えていた。

梨田としてはチームキボウを乗っ取るために打てる手は打ってきたというわけであった。

伏線

網

大和は当初、キボウ営業サポートチームを無視して今まで通りチームキボウでやってきたことをそのまま継続しチームにもそう指示した。

そうする事でサポートチームは何をしていいかわからず困るであろうと考えたからであった。

「大和さん、どうやってチームキボウをサポートしていいかご相談のお時間をください。」

さすがにしびれをきらしたらしく黒馬が大和に声をかけてきた。

“もうこれ以上さすがに無視をする事は出来ないな。”

大和もそろそろ黒馬やサポートチームと話しをしないといけないと考えていたタイミングであった。

黒馬はあくまでもチームキボウが主でありサポートチームはあくまでもサポートする立場である事を強調した。大和がサポートチームの仕事の担当範囲を決めても構わないと言うのであった。

その笑顔はいつもと変わらず大和は判断できなかった。

”黒馬は親切心で言っているのだろうか。それともこれも策略の一つなのだろうか。”

少し前までは黒馬を信頼していた。かつてはライバルとしてキボウ製品担当のポジションをかけて闘った仲ではあったが事業部立ち上げから共に働いてきたメンバーであった。大和より5つくらい年上であったが黒馬は威張ったりすることは決してなかった。

「黒馬には気をつけろ。」

誰もが言った。かつて宇月派閥と対立し田中とその派閥メンバーはわざわざ食事会で黒馬に注意するように大和に伝えてきた。チームもそうだ。皆黒馬には気を付けるべきだと言った。

大和の心で「黒馬に気をつけろ。」の言葉が大きくなっていった。

もし黒馬が狡猾に大和をはめようとしていたのであれば今回の提案や梨田が事業部長になったあとの言動にもすべて意味があるように思えるのであった。

”これは俺をはめるための伏線だったのだ。”

大和はやっとここで気づいた。

”甘かったかもしれない。もっと強く黒馬と接しておくべきだった。”

大和ははじめてこの時黒馬も敵であると気づいた。

(つづく)

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