ここまでのあらすじ
この物語はフィクションです。登場する人物や社名などはすべて架空の名称です。
営業部に残る宇月派閥のメンバーを一掃した梨田は黒馬と組んで大和やチームキボウの影響力を削ぎにかかってきた。黒馬率いるキボウサポートチームはビジネスでのインパクトを発揮する事が出来なかったが梨田が宇月派閥を一掃する際に用いた手法、営業部員の不満を集める事で大和やチームキボウに攻撃をしかけてきた。真向から向き合わずともビジネスに影響がないと判断した大和はそれらを無視していたのだが出張先の京都で受けた梨田からの電話でいよいよ梨田・黒馬との闘いが本格的に始まったことを自覚したのであった。
卓越

闘いは消耗戦となった。
黒馬は継続して営業部員の不満を増幅させ梨田に伝えた。黒馬はこの頃には陰ではなく堂々と攻撃を仕掛けてくるようになっていた。
梨田は営業部の不満をチームキボウに対応するように命令してきた。しかしながら営業のリクエストをすべてうけることは不可能であった。それは大和やチームキボウにはそれ以外にもやらねばならない事がたくさんあったからであった。
10個梨田が命令してきたら大和やチームキボウはそのうち3は対応し、7は断るようにしていた。
梨田はその7を取り上げて大和を責めるのであった。
ただし責めることはできたとしても大和を配置換えしたりチームキボウを解散する事は出来なかった。それは少なくとも3は真摯に対応していたし、大和やチームキボウにしかできない事がたくさんあった。
本当にジリジリとするような闘いであった。
梨田や黒馬はもっと簡単に大和やチームキボウを追い込む事が出来ると考えていたであろう。
宇月が引退後に宇月派閥メンバーを一掃するときはもっと簡単であったに違いない。しかしながらチームキボウメンバーは専門性が高くインフルエンサーとの強い関係を持っていたのでビジネスを考えると替えが効かないのであった。
だとするとチームキボウの箱とメンバーだけを残して大和だけをどこかに異動させればいいと考えた。しかしながら梨田も黒馬も英語がかなり拙く、本国とのコミュニケーションに大きな問題を抱えていた。まったく仕事をしなかったものの前事業部長・宇月は英語で堂々とコミュニケーションする事が出来た。宇月が引退した今となっては大和以外に本国とのコミュニケーションを取れるメンバーは事業部にはいなかったし、そのせいで大和は本国から強い信頼を得ていた。
それがわかっていたから梨田は大和へ嫌がらせを繰り返した。あらゆる企画は上長である梨田の承認が必要なのであるが梨田は敢えて大和が提出する資料には承認をしなかった。
承認されないとビジネスが滞るため大和は梨田に承認してもらうように頭を下げなければいけなかった。そういうときに梨田はいかにも横柄な対応で承認をして大和の自尊心を傷つけようとしてきた。
大和はそういう嫌がらせで傷つくようなタイプではなかった。社内でも武闘派と目されていたしただそういう態度をとる梨田を睨みつけていた。もしくは鼻で笑って対応していた。
事業部外では大和を支援するものも多く新製品事業部を出てこっちにきたらどうかと声をかけてくれる役員も数人いた。しかし大和は自身がここまで育ててきた「キボウ」に強い愛着とこだわりと持っていた。自ら事業部を出る事は考えていなかった。
ここまで来ると会社も梨田と大和の関係性を看過できずになってきた。そして人事部との定例会議が組まれるようになった。
最初のころには人事にいろいろと相談したが言っても無駄なことを知り大和はしばらくすると人事には何も話さなくなった。
人事部はチームキボウ全員にもヒアリングを行った。キボウメンバーは皆梨田と黒馬を責めたが人事は何も動かなかった。
結局は社長・今山とつながっている梨田を誰も責める事はしなかった。
そして英語でのコミュニケーション課題を解決する手が人事によって打たれた。
USの公認会計士資格を持つ人材を事業部に採用したのである。
しかし彼は英語は大和より遥かに堪能ではあったものの結局業界の専門性や経験、人脈を持たず何もする事が出来なかったのである。
結局のとろこ大和を外すためには他社から大和に匹敵する能力を持つものを採用するか、もしくは誰かを育成する必要があった。
社外から人を採用するのはお金がかかるしマボロシの発売が不透明でキボウしかないアーセン社新製品事業部に優秀な人材が来るのかどうか疑問であった。
人を育てるには年単位が必要である。
”ここまで来たら梨田が辞めるか俺が辞めるかどちらかだな。”
大和は覚悟を決めていた。
そしていよいよ天王山の闘いが訪れたのである。
(つづく)



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