ここまでのあらすじ
この物語はフィクションです。登場する人物や社名などはすべて架空の名称です。
大和とチームキボウは新たな闘いに直面していた。梨田の意向を受けて黒馬の元立ち上げられたキボウサポートチームはチームキボウの乗っ取りを意図しているかもしれない事を知った大和とチームは梨田に直接交渉するもキボウサポートチーム設立を止める事が出来なかった。今大和とチームが出来ることはチームキボウとキボウサポートチームの役割分担をチームキボウの有利なように設定する事であった。大和と黒馬の駆け引きに注目が集まる中今会議が始まった。
任せてください

「チームキボウのみなさまはキボウの成功のために国内・本国の社内のステークホルダーに対する業務はとても大変だと理解しています。これからもステークホルダーマネジメントは重要です。ぜひ大和さんやチームキボウの皆様は社内ステークホルダーへの活動に集中して下さい。顧客管理はすべて我々キボウサポートチームが請け負います。任せてください。」
黒馬は笑顔を見せながら大和やチームキボウへこう語りかけた。
黒馬の提案ではキボウサポートチームがトップインフルエンサーを含めたすべての顧客を営業とともに管理するというものであった。つまり現在チームキボウが管理しているトップインフルエンサーをサポートチームに渡せという事である。
チームキボウメンバーは皆驚いた顔をして大和を見る。大和はゆっくりと話し始めた。
「黒馬さん。ご提案ありがとうございます。またお気遣い頂いた事に感謝申し上げます。」
黒馬は安堵の表情を見せる。
「しかしながら我々はその提案をお受けする事が出来ません。」
黒馬の顔がひきつった。
「大和さん。私の提案は梨田さんの承認を受けているんですよ。」
黒馬が慌てるように付け加えてきた。
”梨田の名前を出してくるとは情けない。”と大和は思った。そしてゆっくりと黒馬とキボウサポートチームへ語りかけた。
「製品企画の業務はEnd to Endですべてを把握する必要があります。社内ステークホルダーと協議して戦略や販売目標を立てたのであればそれを実行しモニタリングする。そして最終的に顧客の声を聴く。顧客の声を元にたゆまぬ改善を行う。これが製品企画の業務です。ですので顧客管理をすべてお渡しする事はできません。我々が引き続きトップインフルエンサーは管理します。」
黒馬は言った。
「梨田さん、困ったなぁ。梨田さんも私と同じ考えなんですよ。大人になっていただけませんか。」
黒馬の顔にはもはや笑みはなかった。
大和は逆に笑みをたたえながらこういった。
「顧客のためにそうするのです。」
詭弁

「いいですか。製品企画が顧客の声を聴かなくてどうするんですか。梨田さんもいつも言っているではないですか。”顧客のため”の正しい行いですよ。これが。」
黒馬は一言も返せなかった。
”なんて下らなくて便利な言葉なんだ。”
大和はずっと思っていた。
”顧客のため、とか詭弁だし何にでも使える便利な言葉だ。顧客のためでないといういいがかりで梨田は何人の宇月派閥メンバーを降格に追いやったのだ。”
大和はいつか”顧客のために”というこの言葉で反撃してやろうと思っていた。最初に使う相手は梨田にしたかったが黒馬の提案を看過できず、そして苛立ちを感じた大和は我慢する事が出来ずこの言葉を黒馬にぶつけた。
”どうだ。何も言い返す事が出来ないだろ。お前らが使って人を陥れた言葉だ。くだらない最悪の言葉だろ。”
大和は笑みを浮かべながら黒馬をじっと見た。大和がはじめて黒馬に強く出た瞬間だった。そして大和は確信した。
”黒馬は敵だ。”
そして正直勝ったと大和は確信した。
結局黒馬は大和の反撃を想定していなかったらしく大和の理論を覆す事が出来なかった。
チームキボウが従来通りトップインフルエンサーを管理し、キボウサポートはチームキボウがサポートしない地方レベルのインフルエンサーだけを担当する事になった。
梨田はその後何度も大和を呼んではトップインフルエンサーをキボウサポートに渡すように圧力をかけてきた。しかしながら大和の理論は正論であり例え梨田であっても強制的にチームキボウからその機能を強奪する事はできなかった。大和は既に社内で発言力をもっていたし他部署に広いネットワークを作っていたからである。
安全
だと思った。これでキボウサポートチームはたいしたビジネスインパクトを出す事は出来ないであろう。そしてチームキボウメンバーはトップインフルエンサーをの関係をこれまで同様強める事でいずれキボウサポートチームを逆に吸収する事が出来るだろうと考えた。
これは大和が自身とチームのためにとった手段であった。
(つづく)



にほんブログ村


転職・キャリアランキング
コメント