「遠く離れた空の下」第2章 第46話【情熱】

トラ ビジネス全般(海外での働き方含む)

ここまでのあらすじ

この物語はフィクションです。登場する人物や社名などはすべて架空の名称です。

社長・今山の御前会議で戦略を討論するのはキボウ発売戦略会議以来であった。その時は前事業部長・宇月との間で戦略案が割れたが今回は梨田・黒馬との闘いであった。本国製品責任者バタフライを味方につけた大和は会議に臨み自身の戦略をプレゼンする。平行する議論の中最終判断は今山に託された。社長・今山の出した結論は大和の戦略の採用であった。大和はまたも勝利した。しかしながら以前のような達成感を感じる事が出来ない自分自身に気づくのであった。

情熱

トラ

社長の御前会議で勝利した大和であったが、それは梨田のプライドを大きく傷つけた。

その結果梨田はチームへのプレッシャーを強めるのであった。チームキボウメンバーをの個別面談を繰り返し大和についていっても危険であり自分や黒馬についてくるべきだと何度もチームメンバーに繰り返すのであった。その結果メンバーの中には揺れ動く気持ちを持つものも現れ始めた。

「梨田さんの言っていることも一理あるかもしれません。」

チーム会議でそういう発言をするメンバーが出始めたことは大和を驚かせるには十分であった。

”俺にしか出来ない事がある以上すぐにキボウ製品担当のポジションを奪われる事はないだろう。本国も味方についている以上俺を異動させるにはそれなりの理由が必要だ。”

大和は考えた。実際割り切って働き続ける事は可能だったのである。

しかし大和は先日の会議以来自身の気持ちに気づいていた。

”情熱が冷めてしまった。”

大和は宇月の時もそうであったが衝突の中にあってもモチベーションを保ってきたのは「キボウ」に対する思い入れであった。自分自身が発売までの準備を行い、チームを作り、発売に成功し世界でもトップレベルの成功を収めた製品「キボウ」をさらに発展させたいという情熱が大和を突き動かしていた。

しかし今その情熱が薄れてしまったことに気が付いた。

くだらない派閥争いや自分のチームを作ってキボウを乗っ取りたい黒馬とのどうでもいい争いに疲れた大和はもうモチベーションを保つことが出来なくなっていた。

決断

道

このまま梨田や黒馬と闘いを続けて自身のポジションを保ち続ける事が可能であった。

”しかしそうする事になんの意味があるのだろうか。”

このままアーセンに残っても念願だった製品企画部長のポジションを得る事は出来ないだろう。かと言って本国が大和がいる中で黒馬をそのポジションに就ける事もない。膠着状態は続くであろう。

”これ以上くだらない争いに神経を使ったり時間を使うのは意味がない事だ。”

大和はそう結論付けるまでにそう時間はかからなかった。

”もうアーセンに残る理由はない。”

業界では常に人が動いている。そのため大和も頻繁にヘッドハンターから勧誘の電話を受ける事があった。大和がアーセンを去る意思を固めた後にかかってきたヘッドハンターからの電話を受けた大和は転職を検討していることを告げた。

幸い大和はこの業界では名前が知れていた。

アーセン社へ来る際もそうであったが、アーセン社で「キボウ」を成功させることで大和は業界でも三本指に入るくらいの知名度を得る事に成功していた。

大和にとっては運もあった。大和がクルフト社で同領域の製品担当者をしているときにはその領域は業界であまり注目されていなかった。しかしながら時代が流れテクノロジーが急速に進化する中でその領域な業界で最も脚光を浴びる業界へと進化していたのであった。もともと注目されていなかった領域であったため領域の専門的知識を持つものはそう多くはなく製品企画担当としてこの領域を継続的に担当していた大和は業界で注目を浴びる中堅ビジネスマンとみなされていたのである。

大和はいつも自分は運がいい人間だと思っていた。今回もとても幸運だと思った。

後日2名のヘッドハンターから返事が届いた。彼らはアーセン社よりも遥かに大きな業界最大手企業数社を紹介してきた。

大和が最初務めたクラフト社は業界最大手の1社であり、その後ベンチャー企業に移り今のアーセン社は中堅企業である。

”もう一度大企業で自分の実力を試してみるのもいいかもしれないな。”

大和はそう考えた。アーセンに残るよりも遥かに意味のある挑戦のような気がするのであった。

さらにそのうち2社は大和に部長職を用意する事を約束していた。

もしも転職に成功するならアーセンに残って部長になるよりも遥かに好待遇であり魅力的なオファーであった。

キボウに対する思いはもちろん消え去ったわけではなかったが目の前に提示されたチャンスはあまりにも魅力的であった。

大和は両社との面接に進むことをヘッドハンターに告げた。

(つづく)

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